自律神経の乱れに鍼灸はなぜ効く?「体性—自律神経反射」でわかる整え方

寝つけない・途中で起きる、胃腸が不安定、動悸や息苦しさ、不安感が抜けない——。

こうした状態は「自律神経の乱れ」と表現されることがあります。

検査で大きな異常はないのに、続く辛さに対応する方法として鍼灸が選ばれるケースがあります。

そこで、皮膚や筋肉への入力(刺激)を自律神経の切り替えを助ける。この時、私たちの身体の仕組みとして何が起こっているのか。この記事では、患者さんが納得しやすいように、ポイントを絞ってわかりやすく整理します。


【結論】先に要点だけ

・自律神経は、交感神経(アクセル)と副交感神経(ブレーキ)で内臓・血流・体温などを調整する仕組み。

・鍼灸は、皮膚・筋肉への刺激が脳幹や脊髄で折り返して自律神経に伝わる「反射」を通じて、体の働きに影響しうる。

・ざっくり言うと、腹部の刺激は交感神経が関わりやすく、手足の刺激は副交感神経(迷走神経)側が関わりやすい(※ラットによる研究報。

・強い刺激が必須ではなく、やさしい刺激でも反応が起こり得る

・ストレス反応の一つ「SAM軸(交感神経—副腎髄質系)」は、刺激の強さで“アクセル/ブレーキ”両方向に振れうる。


自律神経とは?

自律神経は、意識しなくても心拍・呼吸・体温・消化など、生命維持に欠かせない働きを自動で調整しています。

その中心になるのが、交感神経と副交感神経です。交感神経は活動・緊張を高める「アクセル」、副交感神経は休息・回復を促す「ブレーキ」とよく表現されます。

ただし大切なのは、「交感神経=悪」「副交感神経=善」ではないこと。多くの臓器は、交感神経と副交感神経の両方から同時に支配を受けています。

これを「拮抗支配(きっこうしはい)」といい、2つの神経が綱引きのように働くことで、心拍や消化などの機能が“ちょうどよく”保たれます。

たとえば仕事中に交感神経が上がって集中力が増すのは、体にとって自然で必要な反応です。

問題になるのは、この綱引きの切り替えがうまくいかないとき。休むべきタイミングでも交感神経のスイッチが入りっぱなしで、ブレーキ(副交感神経)が働きにくい状態が続くと、眠れない・胃腸が乱れる・動悸が出るなどの不調として表れやすくなります。


鍼灸はどのようにして自律神経に関わるのか?:体性—自律神経反射

鍼灸と自律神経の関わりとして「体性—自律神経反射」が考えられています。

体(皮膚・筋肉)に受けた刺激が、無意識の反射として自律神経を介し、内臓の働きに影響しうる、という考え方です。

研究で判明したポイントとしては、「刺激する場所」によって“通りやすいルート”に傾向があることです。

手のツボ(合谷を用いたケース)  

皮膚刺激 → 感覚神経 → 脊髄 →(さらに上行して)脳幹 → 副交感神経(迷走神経) → 胃腸の働きが促進しやすい(=動きやすくなる方向)

お腹のツボ(中脘を用いたケース)  

皮膚刺激 → 感覚神経 → 脊髄 → 交感神経 → 胃の働き・胃酸分泌が抑制しやすい(=落ち着く方向)


このように、鍼灸治療の多くは体性—自律神経反射のメカニズムを活用しながら、交感神経・副交感神経の“切り替え”を助けることで、症状の改善につながることがあります。

・血管や血流(高血圧、低血圧、冷え性、ホットフラッシュなど)

・胃腸に関わる症状(消化不良、便秘、下痢など)

・泌尿器に関わる症状(尿もれ、頻尿など)


やさしい刺激でも効果があり得る理由:痛みが必要とは限らない

「鍼って痛い方が効くんですか?」と聞かれることがありますが、体性—自律神経反射は、痛みを強く認知する脳の領域を介さずに起こる反射として説明されます。つまり、本人が「強い刺激を受けた」と感じなくても反応が起こり得る、ということです。

実際、細い鍼・浅い鍼・刺さない鍼(接触鍼)など、やさしい刺激で行う施術は昔からあります。

特に、自律神経の不調が強い方ほど、すでに交感神経が上がりっぱなしになっている場合があるため、強刺激でさらに緊張が増すことがあります。そういうときは、まず“安全だと感じる刺激”で体の反応を整え、徐々に調整する方が結果が安定しやすいこともあります。


ストレスの仕組み:SAM軸を知ると「刺激量の大切さ」が腑に落ちる

ストレス反応には、交感神経と副腎髄質が関わる「SAM軸(交感神経—副腎髄質系)」があります。

アドレナリン・ノルアドレナリンなどが分泌され、血圧や血糖が上がり、心身が“戦闘モード”に入る仕組みです。

ここで重要なのは、鍼灸刺激がSAM軸に対して活性化する方向にも、抑える方向にも働きうるとされ、その鍵の一つが「刺激の強さ」と考えられている点です。

たとえば、痛みを伴うような強い刺激では交感神経が活性化しやすく、結果としてSAM軸が働きやすくなる一方、撫でる・触れる程度のやさしい刺激では交感神経の活動が抑制される方向に働くことがある、と説明されています(※反応には個人差があります)。

だからこそ、自律神経が乱れている人ほど「強い刺激で治す」より、その人に合う刺激量を設計していくことが大切になります。眠れない、動悸、不安が強い人にとって、ここは「痛くない施術でも意味がある」ことの安心材料にもなるはずです。


【まとめ】鍼灸治療で自律神経を整える

自律神経の不調は、単なる気の持ちようではなく、切り替えの回路がうまく働きにくくなっている状態として現れることがあります。鍼灸は「体性—自律神経反射」という道筋を通じて、その切り替えを助ける可能性があります。

そして、腹部と手足で関わりやすい神経が変わる“傾向”、やさしい刺激でも反応が起こり得ること、ストレスのSAM軸が刺激量によって上げ下げ両方向に振れうることを押さえると、「痛くないと効かない」という誤解が減り、安心して受けやすくなります。

大切なのは、「強さ」より「合う刺激」。あなたの体に合う刺激量を一緒に探しながら、睡眠・胃腸・動悸などの“変化の指標”を確認していくことが、安定した改善への近道です。


横浜市神奈川区六角橋・白楽エリアの鍼灸マッサージ院 如月では、初診時に丁寧な問診と体質チェックを行い、あなたに合った治療方針を一緒に組み立てていきます。自律神経の症状でお悩みの方は、まずはお気軽にご相談ください。

※参考文献

・「BLUE BACKS 東洋医学はなぜ効くのか ツボ・鍼灸・漢方薬、西洋医学で見る驚きのメカニズム」 山本高穂・大野智 講談社

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