より良い眠りを手に入れるために:呼吸に目を向ける
私たちは生まれた瞬間から、無意識に呼吸を続けています。
起きているときも、寝ているときも、途切れることなく続くこの”呼吸”
実は睡眠の質を大きく左右していることをご存じでしょうか?
睡眠の質が低いと感じている人の中には、「いくら寝ても疲れが取れない」「夜中に何度も目が覚めてしまう」「布団に入ってもなかなか眠れない」という悩みを抱えている方も多いのではないかと思います。その原因の一つが「正しく呼吸できていない」ことにあるかもしれません。
今回は、睡眠と呼吸の関係を解説し、睡眠の質を向上させるための呼吸法についてお話しします。
なぜ呼吸が睡眠に影響を与えるのか?
呼吸が睡眠に大きな影響を与える理由には、大きく分けて3つの視点があります。
1. 生理的な理由:酸素供給と睡眠の質
私たちの体は、酸素を取り込むことで細胞のエネルギーを作り出しています。酸素が不足すると、脳が「危険だ!」と判断し、交感神経を活性化させるため、睡眠が浅くなったり途中で目が覚めたりすることがあります。
例えば、閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSA)では、睡眠中に一時的に呼吸が止まり、体が酸素を十分に取り込めなくなります。その結果、頻繁に目が覚めてしまい、深い睡眠を取ることができません。
このように、睡眠時の呼吸の不具合は、「酸素⇆二酸化炭素」の交換を妨げ、結果として睡眠の質を大きく低下させてしまうのです。
2. 精神的な理由:呼吸とリラックスの関係
呼吸と精神状態は密接に結びついています。緊張したときに深呼吸をすると気持ちが落ち着くのは、多くの人が経験したことがあるでしょう。
これは、呼吸が自律神経のバランスを調整する役割を持っているからです。
私たちは呼吸をする際、横隔膜を使っています。この横隔膜の動きが精神の安定と密接に関わっており、横隔膜をしっかりと動かして深い呼吸をすることで、ストレスや不安を軽減することができます。
特に入眠時には、ゆっくりとした呼吸を意識することで、副交感神経を優位にし、スムーズに眠りにつく準備が整います。
息をしっかり吐くことでリラックスしやすくなるため、寝る前の呼吸を意識することが重要です。
3. 身体的な理由:姿勢と睡眠の質
私たちは1日に約2万回の呼吸をしています。
しかし、横隔膜をうまく使えていないと、
肩や首、腰の筋肉を過剰に使って呼吸をすることになり、慢性的な肩こりや腰痛の原因になることもあります。
また、寝ているときの姿勢も呼吸に影響を与えます。
例えば、仰向けに寝たときに腰が床につかない状態だったり、肩をすくめたまま寝ていたりすると、呼吸が浅くなりやすいのです。
そのため、睡眠の質を向上させるためには、適切な寝具の選択とともに、正しい呼吸ができる姿勢を整えることが大切です。
本来あるべき呼吸とは?-正しい呼吸を知る-
肺は胸郭にあるため、息を吸うと胸が膨らみ、吐くと縮みます。また、息を吸ったときには横隔膜が下がるため、その圧力を受けてお腹の筋肉も膨らみます。
反対に、息を吐く際には横隔膜が上がり、それと同時にお腹の筋肉も萎んでいきます。そのため、本来の呼吸では胸とお腹の両方が連動して膨らみ、吐くときには両方が萎むのが理想的です。
しかし、現代人の多くは呼吸が浅く、胸とお腹の動きが連動していないことがあります。
また、横隔膜が緊張し続けたり、余計な筋肉を使って呼吸をしたりするケースも少なくありません。
本来あるべき呼吸のポイントは次の通りです:
- 横隔膜がきちんと上下している。
- 胸とお腹の両方が同時に膨らんだり萎んだりしている。
- 吸うときは鼻から行う。
- 吐く時間のほうが吸う時間よりも長く、吐き終わった後に1、2テンポ止まってから吸う。
これらを意識することで、深くリラックスできる理想的な呼吸が可能になります。
現代人の呼吸は危険? 『睡眠の質を下げる呼吸』
多くの人が無意識のうちに「息を吸う時間が長い」傾向があります。私たちは酸素を求めるあまり、吸うことばかり意識してしまい、息を十分に吐き切れていないのです。
しかし、人が息苦しさを感じるのは酸素不足ではなく、二酸化炭素が体に溜まりすぎたときだと考えられています。ストレスや睡眠不足が続くと、呼吸数が増え、ますます睡眠の質が低下してしまうのです。
このような呼吸の乱れを改善するには、「息をしっかり吐くこと」 を意識する必要があります。
睡眠の質を高めるための呼吸法「アンチパラドックス呼吸」
では、どのように呼吸を整えれば良いのでしょうか? 簡単に実践できる方法として「アンチパラドックス呼吸」をご紹介します。
アンチパラドックス呼吸法は、リラックスしようと意識しすぎることで逆に緊張してしまう現象を防ぎ、自然な睡眠を促す方法です。
◎やり方◎
- 「あお向けに寝て」胸とお腹に手を当てて始めます。
- 鼻から3秒かけて息を吸う。
- 鼻から6秒かけて息を吐く。
- 呼吸を3秒停止する。
この「2⇨3⇨4」の流れを3〜4回行いましょう。
ポイントは吐くときも吸うときもお腹と胸が一緒に同じように動くことを意識することです。
毎日意識して行うことで、「正しい呼吸」を取り戻すことができるのでぜひトライしてみましょう。
まとめ:正しい呼吸で快眠を取り戻そう
睡眠の質を向上させるためには、呼吸の仕組み・役割を理解し、正しい呼吸法を実践することが不可欠です。特に、
- 横隔膜をしっかりと使うこと
- 胸とお腹が連動する自然な呼吸を意識すること
- 鼻呼吸であること
これらのポイントを意識することで、深い眠りにつながる可能性が高まります。
この方法を実践することで、副交感神経、つまり身体はリラックスモードに偏ることで自然に深い眠りへと移行しやすくなります。
心が疲れて呼吸が止まっていませんか?睡眠の質下がっていませんか?
アンチパラドックス呼吸はそんな方にぜひおすすめの方法ですのでぜひ試してみてください。
睡眠の質を改善するためには、個々の体質やライフスタイルに合ったアプローチが必要です。
呼吸はほんの一因です。睡眠の質に不安がある方・眠りについて不安のある方は、ぜひ「鍼灸マッサージ院 如月」へご相談ください。東洋医学の伝統的な治験と睡眠科学の治験から、あなたに合った最適なケアをご提案いたします。
※参考文献
·「ビジネスに活かす睡眠資格 スリーププランナー」西野精治(著), 千葉伸太郎(著), 一般社団法人ブレインヘルスラボ