仕事中はパソコン、移動中はスマートフォン、帰宅後もタブレット――。
現代に生きる私たちの「目」は、ほとんど休む間もなく働き続けています。
そんな毎日の中で、こんな症状を感じたことはありませんか?
- 目がゴロゴロして、砂が入っているような感じがする
- 夕方になると目がかすんで、画面の文字が読みにくくなる
- 目薬をさしてもすぐに乾く、なんとなくスッキリしない
- まばたきのたびに目が重く、疲れを感じやすい
- 乾いているのに、涙が出てきてしまうことがある
これらはすべて、ドライアイ(乾性角結膜炎)の代表的なサインです。
西洋医学的には、涙の分泌量が減ることや、涙の質(油分・水分・ムチン層のバランス)が低下することで、目の表面が乾燥してしまう状態と説明されます。
原因としては、長時間のデジタル機器使用によるまばたき減少、エアコンによる室内乾燥、コンタクトレンズの長時間装用、加齢による涙腺機能の低下などが広く知られています。
ところが、同じようにパソコンを長時間使っていても、ドライアイに悩む人とそうでない人がいます。また、目薬で一時的に楽になっても、根本的にはなかなか改善しない……というお声もよく聞きます。
そこで今回は、東洋医学(中医学)の視点からドライアイの原因を深掘りし、体質や生活習慣に合わせたケアのヒントをご紹介します。鍼灸治療がドライアイにどうアプローチできるかも、あわせて解説していきます。
東洋医学で考える「ドライアイ(目干渋)」の基本
東洋医学では、「目」は五臓六腑の「肝(かん)」と密接につながっていると考えます。
「肝は目に開竅(かいきょう)する」という言葉があります。
これは「肝の状態は目にあらわれる」という意味で、肝が健やかであれば目もうるおい、肝が弱ると目にさまざまな不調が出やすくなると理解されています。
では、なぜ「肝」が目と関係するのでしょうか。
東洋医学における「肝血(かんけつ)」とは、肝が蓄えている栄養物質・保湿物質のことです。
目の生理的な働きは、この肝血による「滋養(じよう)=うるおいを与えること」に依存しています。
つまり、肝血が十分に目へ届けられることで、目はうるおいを保ち、正常に機能できるのです。
裏を返すと、肝血が不足したり、体内の潤い物質(陰液〔いんえき〕)が損傷されたりすると、目が十分に滋潤(じじゅん=しっかりとうるおうこと)されなくなり、乾燥症状が現れます。
中医書(東洋医学の古典)には、この状態を「目干渋(もくかんじゅう)」と記しています。
現代でいうドライアイにあたる概念で、「両目の潤い不足による乾燥・かすみ・疲れやすさ」を指しています。
さらに、外からの気候の影響(乾燥・熱)が引き金になるケースも東洋医学では重視されており、体の内側・外側の両面から目の乾燥を捉えるのが特徴です。
「ドライアイ」はどんなときに起こりやすいのか?
東洋医学の視点では、次のような生活習慣や体質がドライアイを引き起こしやすいと考えられています。
・目の使いすぎ
長時間の読書・スマホ・パソコン作業は「血(けつ)」を消耗させます。東洋医学では「目は血を消費する」とされており、使えば使うほど肝血が損傷されやすくなります。
・お酒の飲みすぎ
過度の飲酒は体内の陰液(うるおいを担う水分・栄養)を傷つけます。アルコールには熱を生じさせる性質があり、潤いを乾かしてしまいます。
・乾燥・熱い気候・環境
季節的な乾燥(秋冬)や強い熱気、エアコンの風が直接目に当たる環境なども、体外から目の潤いを奪う原因になります。
これらの要因が重なるほど、目のうるおいが損なわれやすくなります。「なぜか秋になると目が乾く」「残業が続くと特にひどい」という方は、東洋医学的なアプローチが合っているかもしれません。
東洋医学でみるドライアイ 鍼灸の2つのタイプ
如月では、ドライアイに悩む方の症状や体質を丁寧に確認したうえで、大きく2つのタイプに分類してアプローチしています。同じ「目が乾く」という症状でも、体の中で何が起きているかによって、ツボの選び方や養生の方法が変わってきます。
タイプ① 潤い不足タイプ(陰液・血不足〔いんえき・けつふそく〕)
肝が蓄えるべき「血(けつ)」や、全身のうるおいを担う「陰液」が不足しているタイプです。
目の表面だけでなく、体全体が乾いている印象があります。
スクリーンの前で長時間過ごすことが多い方、睡眠が浅い方、もともと細身で疲れやすい方に多く見られます。
◎目安となる症状
- 両目のじんわりとした乾燥感、ゴロゴロ感
- ものを見続けると疲れを感じやすい
- 爪の色が薄い、顔色が淡い
- 眠りが浅い、夢をよく見る(不眠多夢〔ふみんたむ〕)
◎ 治法(ちほう=東洋医学的な治療の方向性)
肝血と陰液を補い(補血滋陰〔ほけつじいん〕)、目に十分な潤いを届けることを目指します。
◎ 代表的なツボ
- 三陰交(さんいんこう)・肝兪(かんゆ)・曲泉(きょくせん)など
◎ 養生のポイント
- 1〜2時間に1回、目を閉じる・遠くを見るなど、意識的に目を休める習慣をつけましょう。
- クコの実(枸杞子〔くこし〕)、黒ごま、ほうれん草など、肝血を補う食材を積極的に取り入れてみてください。
- 夜更かしは肝血をさらに消耗させます。できるだけ日付が変わる前に就寝することを心がけましょう。
タイプ② 気候・熱タイプ(水液損傷〔すいえきそんしょう〕)
乾燥した気候や強い熱気など、外からの環境的な要因が体内(とくに目)の潤い物質を傷め、乾燥症状を引き起こしているタイプです。
秋冬の乾燥シーズンや、夏の冷房がよく効いた環境で症状が悪化しやすい方、もともと体に熱がこもりやすい方に見られます。
乾燥感に加えてかゆみを伴いやすいのが、このタイプの特徴です。
◎目安となる症状
- 目の乾燥感とともに、かゆみや熱感がある
- 季節の変わり目(とくに秋)や暖房・冷房の効いた部屋で症状が出やすい
- 口や鼻も乾く感じがある
- のどがよく渇く
- 乾いた咳が出ることがある
◎ 治法
体内に侵入した燥(そう=乾燥の邪気)や熱を取り除きながら、損傷された水液を回復させます(潤燥・生津止渇〔じゅんそう・しょうしん〕)。
◎ 代表的なツボ
- 陽池(ようち)・膻中(だんちゅう)・厲兌(れいだ)
◎ 養生のポイント
- 乾燥する季節は、加湿器や濡れタオルなどで室内の湿度を50〜60%程度に保ちましょう。
- 梨、白きくらげ、蓮根など、肺や体を潤す食材が養生に向いています。
- 辛いもの・揚げ物・アルコールは体内の熱を助長しやすいため、控えめにするとよいでしょう。
- エアコンや扇風機の風が直接目や顔に当たらないよう、風向きを工夫してください。
【まとめ】タイプを知ることが、根本ケアへの第一歩
ドライアイは「目が乾く」という一言で語られがちですが、東洋医学の視点では体の中で何が不足・損傷しているかによって、アプローチがまったく異なります。
今回ご紹介した2つのタイプを簡単に整理すると、次のようになります。
・潤い不足タイプ(陰液・血不足)
肝血や陰液の消耗が根本原因。疲労・不眠・耳鳴りなど、全身の乾き・虚弱サインを伴いやすい。
・気候・熱タイプ(水液損傷)
外からの乾燥・熱が潤い物質を傷める。かゆみ・口鼻の乾燥・のどの渇きを伴いやすい。
「私はどちらのタイプだろう?」と思われた方もいらっしゃるかもしれません。実際には、両方の要素が混在しているケースも少なくありません。
だからこそ、問診でしっかりと体質や生活習慣を確認したうえで、その方だけの治療プランを立てることが大切です。
横浜市神奈川区六角橋・白楽の鍼灸マッサージ院如月では、初回に丁寧な問診と東洋医学的な体質チェックを行っています。
「どのタイプか」「今どんな状態か」を一緒に確認しながら、その方に合ったツボへのアプローチ・生活習慣のアドバイスをご提案しています。
目のトラブルは鍼灸治療の適応となっています。「目薬だけでは追いつかない」「根本から改善したい」とお感じの方は、ぜひ一度ご相談ください。
【参考文献】
・『中医症状鑑別診断学』(東洋学術出版社)
・『中医証候鑑別診断学』(東洋学術出版社)
・『中医基本用語辞典』(東洋学術出版社)
