「朝、ベッドから立ち上がった瞬間に踵が痛む」「長時間歩いたあと、足の裏がじんじんと痛む」「足首をひねったあと、なかなか回復しない」——そんなお悩みをお持ちの方は、ぜひ最後まで読んでみてください。
足の痛みといっても、その場所や性質はさまざまです。たとえば次のような場面で足の不調を感じている方は少なくありません。
- 朝の第一歩目に踵(かかと)に鋭い痛みが走る
- 立ち仕事のあと、足の裏全体がじんじんと疲れる
- 足首をひねりやすく、捻挫を繰り返してしまう
- 足の内側のくるぶし周辺がしびれる、または痛む
- 雨の日や台風の前後に足の痛みが強くなる
- 年齢とともに足腰の疲れが抜けにくくなってきた
・足関節捻挫は足首の靭帯(じんたい)が伸びたり断裂したりすることで起こります。
・足底腱膜炎(そくていけんまくえん)は、足の裏にある膜状の組織に炎症が生じる状態です。
・足根管症候群(そっこんかんしょうこうぐん)は、足首の内側を通る神経が圧迫されてしびれや痛みが起こる状態を指します。
現代医学(西洋医学)では、これらは主に骨・靭帯・筋肉・神経などの物理的な構造の問題として捉えられます。

足首以下には片足だけで28個の骨、19個の大きな筋肉、100個以上の靭帯が存在しており、この複雑な構造のどこかにズレや炎症が生じることで痛みが発生すると考えられています。
一方、東洋医学では「なぜその人がその痛みを起こしやすいのか」という体質や環境のバックグラウンドに注目します。
同じ「足の痛み」でも、その原因となる体の状態はひとりひとり異なります。当院では、お体の状態を丁寧に確認したうえで、その方に合った鍼灸・マッサージのアプローチをご提案しています。
この記事では、東洋医学の視点から「足の痛み」を引き起こしやすい体質・タイプを解説します。ご自身の状態を理解するヒントとして、ぜひご活用ください。
東洋医学で考える「足の痛み」の基本
東洋医学(中医学)では、中医書における「足」の範囲は足くび(足首)以下の部位全体を指します。足の裏・踵・くるぶし・指、これらはすべて「足」の範疇(はんちゅう)に含まれます。
そして足の痛みは、大きく次の2つの視点から原因を考えます。
- 「不通則痛(ふつうそくつう)」——気(き)や血(けつ)の流れが滞ることで痛みが生じる
- 「不栄則痛(ふえいそくつう)」——骨や筋肉・靭帯を養う栄養成分(気・血・陰液)が不足することで痛みが生じる
「気(き)」とは体を動かすエネルギーのこと、「血(けつ)」とは体の組織を潤し栄養を届ける物質のことです。
現代医学でいう血液とは少し異なる概念ですが、全身の組織に栄養を供給するという点では近いイメージです。
骨・靭帯・筋肉はいずれも気と血によって養われています。これらが不足したり、流れが滞ったりすると、組織が正常に機能せず、痛みやしびれとして現れます。
また、冷えや湿気などの外からの影響(外邪〈がいじゃ〉)が気血の流れをさらに妨げることもあります。
東洋医学的な視点でみると、足の痛みは「体質的な問題」「体質+気候の問題」「気候・環境の問題」の3つの大きなカテゴリに整理できます。以下では、それぞれのタイプをより詳しく解説します。
足の痛みはどんなときに起こりやすいのか?

東洋医学では、足の痛みが起こりやすくなる背景として、次のような要因が挙げられます。
- 加齢によって体の潤い(陰液〈いんえき〉)や精(せい)が減少していくとき
- 長期の過労・睡眠不足・慢性的なストレスが続いているとき
- 大病・手術・出産・大量出血などで体力を大きく消耗したあと
- 長期間にわたる病気の療養後
- 冷えや湿気の多い環境に長時間さらされているとき
- 台風の接近・低気圧・梅雨時期など、気象が大きく変化するとき
これらの要因が重なると、足を養うための気血が不足したり、流れが滞ったりしやすくなります。
その結果として、踵の痛み・足裏の炎症・足首の不安定感・しびれなどが現れやすくなるのです。
特に「ちょっとした段差で足首を捻りやすい」「捻挫の回復が以前より遅くなった」と感じている方は、体質的な背景を見直すサインかもしれません。
東洋医学でみる足の痛みの3つのタイプ
足の痛みを東洋医学的に整理すると、大きく3つのタイプ(証〈しょう〉)に分類できます。ご自身がどのタイプに当てはまるかを確認するヒントとしてご活用ください。なお、実際の診療では複数のタイプが重なっていることも多く、お一人おひとりの状態に合わせた丁寧な見立てが必要です。
タイプ①――肝腎陰虚(かんじんいんきょ)タイプ/栄養と潤い不足による足の痛み
「肝腎陰虚」とは、肝(かん)と腎(じん)の働きを支える潤い成分(陰液〈いんえき〉)が不足している状態です。東洋医学では、骨・腱・靭帯は腎(じん)が主り(つかさどり)、筋肉・腱の柔軟性は肝(かん)が支えると考えます。
これらが不足すると、組織に栄養が届かなくなり、「不栄則痛」として痛みが現れます。
◎目安症状
- 足の裏・踵(かかと)に鈍い痛みがある
- 赤みや腫れはほとんどない
- 長時間立っていると疲れやすく、足がだるくなる
- めまい・耳鳴りがある
- 目がかすむ、疲れ目がひどい
- 足や膝が重だるい感じがする
- 加齢や過労によって症状が悪化しやすい
◎治法(ちりょうほう)
肝と腎の陰液を補い(滋補肝腎〈じほかんじん〉)、筋骨・靭帯に栄養を届けることを目指します。
◎代表的なツボ
- 湧泉(ゆうせん)
- 然谷(ねんこく)
- 復溜(ふくりゅう)
- 太谿(たいけい) など
◎養生のポイント
- 過労・夜更かしを避け、しっかりと休息を取ることが大切です
- 黒ごま・くるみ・黒豆・山芋など、腎を養う食材を意識的に取り入れましょう
- 目の使い過ぎ(スマートフォン・パソコン)は肝の血を消耗させるため、こまめに休憩を
- 激しい運動よりも、ゆっくりとしたウォーキングやストレッチが向いています
タイプ②――気血両虚(きけつりょうきょ)タイプ/体力低下と栄養不足による足の痛み
「気血両虚」とは、体を動かすエネルギー(気)と、組織に栄養を届ける血(けつ)の両方が不足している状態です。
長期の病気・大病・出産・大量出血などで体力を大きく消耗したあとに起こりやすいタイプです。足を支える組織が十分に養われないため、踵や足裏に慢性的な痛みが現れます。
こちらも「不栄則痛」として痛みが現れます。
◎目安症状
- 踵・足裏に痛みがあるが、赤みや腫れはない
- 日中よりも夜間のほうが痛みが強くなる傾向がある
- 身体的・精神的な疲労感が強い
- 顔色が青白く、生気が感じられない
- 自然に汗が出やすい(特に動いていなくても汗をかく)
- 少し動いただけで息切れや動悸がある
- 食欲が低下しがちである
◎治法
気と血の両方を補い(補気養血〈ほきようけつ〉)、足の組織に栄養が行き渡るようにします。
◎代表的なツボ
- 足三里(あしさんり)
- 条口(じょうこう)
- 隠白(いんぱく)
- 三陰交(さんいんこう) など
◎養生のポイント
- 消化に良い食事を規則正しく取り、胃腸を労ることが気血補充の基本です
- なつめ・鶏肉・ほうれん草・にんじんなど、気血を補う食材がおすすめです
- 無理な運動は控え、体力に合わせてゆっくりと回復させましょう
- 夜間の痛みが強い場合は、就寝前に足を温めるセルフケアが有効なことがあります
タイプ③――寒湿痺阻(かんしつひそ)タイプ/冷えと湿気による足の痛み
「寒湿痺阻」とは、冷え(寒邪〈かんじゃ〉)と余分な水分・湿気(湿邪〈しつじゃ〉)が体内に侵入し、気血の流れを妨げている状態です。
「不通則痛」のタイプで、主に足の指や足全体に重だるい痛みが生じます。梅雨時期や台風・低気圧のときに症状が悪化しやすいのが特徴です。
◎目安症状
- 歩くときに足が重だるく、ひどい場合は足を引きずることがある
- 足の指や足全体に痛みが広がりやすい
- 皮膚が冷たく、青白い
- 天気が悪い日・雨の日・寒い日に症状が強くなる
- 足のむくみが出やすい
- 長時間寒い場所・湿気の多い場所にいると悪化する
◎治法
冷えを散らし(散寒〈さんかん〉)、余分な湿気を取り除き(除湿〈じょしつ〉)、気血の流れを回復させます(通絡止痛〈つうらくしつう〉)。
◎代表的なツボ
- 崑崙(こんろん)
- 次髎(じりょう)
- 命門(めいもん) など
◎養生のポイント
- 足首・足先を冷やさないようにし、靴下や腹巻きで冷え対策をしましょう
- 生姜・ねぎ・シナモン・よもぎなど、体を温める食材を積極的に取り入れましょう
- 冷たい飲み物・生もの・甘すぎる食品は湿気を体内に溜めやすいので控えめに
- 足湯(42〜43℃、15〜20分程度)は冷えと湿を取り除くセルフケアとして有効です
- 雨の日・台風前後は無理に外出せず、足を休めることも大切なケアです
【まとめ】足の痛みのタイプ別の違いを見極めて養生する

ここまで、東洋医学の観点から足の痛みを3つのタイプに分けて解説しました。最後に、それぞれの違いを簡単に整理します。
- 肝腎陰虚タイプ——加齢・過労による潤い不足。踵・足裏に鈍痛。赤みや腫れはなく、めまい・耳鳴りを伴うことが多い
- 気血両虚タイプ——長病・大病後の体力低下。踵・足裏の痛みが夜間に強まる。顔色が悪く疲労感が強い
- 寒湿痺阻タイプ——冷え・湿気による気血の滞り。足の重だるさ・指の痛み。天候の悪化で症状が強まる
もちろん、実際にはこれらのタイプが組み合わさっているケースも多くあります。たとえば「加齢による陰虚(いんきょ)の上に、冷えも加わっている」「体力不足に梅雨の湿気が重なって症状が悪化している」といった複合的な状態もよく見られます。
神奈川区横浜市西神奈川・白楽エリアの鍼灸マッサージ院如月では、ご来院いただいた際に丁寧な問診(もんしん)と身体診察を通じて、お一人おひとりの「証(しょう)」(体の状態のパターン)を見立てます。「なんとなく足が痛い」「病院では異常なしと言われたけれど不快感が続く」という方も、東洋医学的な視点から原因を探ることで、新たなアプローチが見えてくることがあります。
足の痛み・足首の不安定感・踵のしつこい痛みでお悩みの方は、ぜひ一度ご相談ください。お体の状態をしっかりと確認したうえで、あなたに合った鍼灸・マッサージの施術をご提案いたします。
◎参考文献
・『中医症状鑑別診断学』(東洋学術出版社)
・『中医証候鑑別診断学』(東洋学術出版社)
・『十四経発揮』 東医針法研究会編
・『中医基本用語辞典』(東洋学術出版社)
