日本の夏は、単なる「暑さ」だけではありません。梅雨の「湿気」と、その後に一気に訪れる「猛暑」の急変。
この気候変化に体が追いつかず、体調を崩す人が毎年増えています。
東洋医学では、こうした「湿」と「暑」の影響を、湿邪・暑邪・暑湿という概念で捉え、季節ごとに適した養生を行います。特に、湿邪が残ったまま暑邪にさらされる「暑湿」は、頭痛、嘔吐、食欲不振などさまざまな不調を引き起こします。
この記事では、東洋医学の視点から梅雨〜猛暑の体調管理を解説し、実践できる鍼灸やセルフケアの方法まで丁寧にご紹介します。
湿邪と暑湿の違いとは?|東洋医学で理解する気候と体の反応
湿邪:梅雨に体に溜まる「下注性」の邪気

梅雨時期は湿気が多く、東洋医学でいう「湿邪」が体内に侵入しやすくなります。
湿邪の特徴は「下注性」――つまり、体の下に溜まる、粘着性がある、重たいという性質です。
体内に湿がこもると、以下のような症状が現れます:
- 胃腸の不調(食欲低下・胃もたれ)
- 倦怠感、眠気、頭重感
- 手足のむくみや冷え
▼詳しい説明と養生法にはこちら

暑湿:急な高温が引き起こす「炎上性」の症状

梅雨が明けた直後、急激に気温が上昇すると、体内に残った湿邪が暑邪と結びつき「暑湿(しょしつ)」に変化します。
この暑湿は、「炎上性」――つまり、体の上部に熱がこもるような性質を持ち、嘔吐・頭痛・眩暈などの“上焦”症状が顕著になります。
まさに、「雨上がりのアスファルトから蒸気が立ちのぼる」ように、湿と熱が一気に上昇して体調を崩すイメージです。
中国伝統医学にみる「暑湿症状の2タイプ」とそのセルフケア
東洋医学では、暑湿の症状も体質や病理により2タイプに分かれると考えます。
自分の状態を理解し、適切なセルフケアを行いましょう。
暑湿困脾(しょしつこんぴ)
暑邪が脾胃の虚(弱った胃腸)に作用し、気機失調(消化・吸収能力の低下)を起こすタイプ。
主な症状:
- 頭重感、眩暈、口の粘り
- 心下痞(みぞおちのつかえ)
- 吐き気、嘔吐
- 食欲不振、腹満
- 身体が重く、午後に微熱が出る
セルフケアツボ:
尺沢・解渓・足三里・内関など

暑湿気虚(しょしつききょ)タイプ
湿邪の影響で脾虚が進行し、暑邪によってさらに気虚が悪化するタイプ。
主な症状:
- 微熱、頭重感、眩暈
- 口の粘り、食欲不振
- 精神疲労(神疲)、息切れ(少気)、倦怠感
セルフケアツボ:
気海・関元・足三里・中府・膻中・尺沢など

季節の変わり目に実践したい|暑湿を防ぐ東洋医学的養生法

湿をためない、熱をこもらせない生活習慣
- 食事: 脾胃を守るために、冷たい・脂っこい物は控える → 黒豆、大豆、しそ、カカオなどを活用
- 入浴: シャワーではなくぬるめのお風呂に浸かって発汗促進
- 睡眠環境: 除湿器や通気性の良い寝具で快適な睡眠を確保
- 運動: 朝・夕方の涼しい時間のウォーキングで湿を外に出す習慣を(日中だと汗をかきすぎるためNG)
猛暑に向けた「体の熱慣れ」も必要
- 汗をかける体づくり:軽い運動+半身浴で汗腺を刺激
- クーラーの使用は控えめに:外気温とのギャップを小さく保つ
急な気温変化に負けない身体を、東洋医学で育てよう

梅雨から猛暑への急変期は、東洋医学的に見ると「湿と熱の交錯=暑湿」のダメージがピークに達するタイミングです。
しかし、体質に合った食養生、的確なツボ刺激、季節ごとの調整法を取り入れれば、不調を予防し、夏を軽やかに乗り切ることができます。
「未病」のうちに自分を整える東洋医学的ライフスタイルを、ぜひこの夏からスタートしてみてください。
また、セルフケアだけではカバーしきれない不調を感じる場合は、東洋医学のプロフェッショナルに相談するのもおすすめです。
横浜市神奈川区六角橋・白楽エリアにある鍼灸マッサージ院「如月」では、梅雨特有の不調や体質に合わせた鍼灸・指圧・食養生アドバイスを行っております。
梅雨の体調不良にお悩みの方、ぜひ一度気軽にご相談ください。
※参考文献
・東洋医学の春夏秋冬 セルフケアでからだを整える 大上勝行 三樹書房
・現代の食卓に生かす「食物性味表」改訂版 日本中医学食養生学会 燎原書店
・中医内科治療大成 中医臨床体系
・中医診断学 人民衛生出版社