「生理痛」を東洋医学で考える|体質タイプにより原因・対処法は違う

「毎月くる生理痛がつらくて、仕事も家事も手につかない」

「鎮痛剤を飲んでも効きが悪くなってきた気がする」

「痛み止めに頼り続けることへの不安がある」

そんな思いを抱えて、当院にご来院される方はとても多くいらっしゃいます。

生理痛は、医学的には「月経困難症」とも呼ばれます。

月経前後や月経期間中に起こる腹部の痛みで、ひどい場合には顔面蒼白・冷や汗・吐き気・嘔吐といった症状を伴うこともあります。

日常生活のさまざまな場面で、こんな経験はありませんか?

  • 生理が始まる数日前から、下腹部に重だるい感覚がある
  • 生理初日・2日目に鎮痛剤が手放せない
  • 腰や背中まで痛みが広がる
  • 経血に塊が混じっていたり、色が気になる
  • 生理のたびに気分が落ち込んだり、イライラしやすくなる

西洋医学では、生理痛の原因としてプロスタグランジン(子宮を収縮させる物質)の過剰分泌や、子宮内膜症・子宮筋腫などの器質的疾患が挙げられます。

一方、東洋医学では「なぜその人に生理痛が起きているのか」という体質・体の状態(証)から原因を読み解きます。

同じ「生理痛」でも、冷えからくるタイプ、ストレスからくるタイプ、体力不足からくるタイプなど、タイプによってアプローチがまったく異なります。

この記事では、東洋医学の視点から生理痛のメカニズムと7つの体質タイプを丁寧にご紹介します。

ご自身の体質を知ることで、より根本的なケアへの第一歩になれば幸いです。


東洋医学で考える「生理痛」の基本

東洋医学では、生理痛のことを「痛経(つうけい)」または「経行腹痛(けいこうふくつう)」と呼びます。

東洋医学の根本的な考え方に、「気血(きけつ)」という概念があります。

「気」とは体を動かすエネルギーのこと、「血」とは体を栄養する血液や体液のことです。この気と血が全身をスムーズに巡っているとき、人は健康でいられます。

生理痛が起こる根本的なメカニズムは、「気血の運行が滞ること(不通則痛/ふつうそくつう)」または「子宮への気血の供給が不足すること(不栄則痛/ふえいそくつう)」の2つです。

「不通則痛」とは、「通じなければ痛む」という意味です。渋滞した血液が子宮に溜まり、圧力がかかることで痛みが生じます。

「不栄則痛」は、「栄養が届かなければ痛む」という意味で、体力・血液が足りずに子宮が養われないために痛みが生じます。

さらに東洋医学では、体全体の巡りを調整する五臓(肝・心・脾・肺・腎)のバランスが女性の月経と深く関わっていると考えます。


生理痛はどんなときに起こりやすいのか?

東洋医学の観点から見ると、生理痛が起きやすい状況や生活習慣のパターンがあります。体質によって異なりますが、代表的なものをご紹介します。

  • 慢性的なストレスや感情の抑圧が続いているとき(気の流れが滞りやすい)
  • 冷たい飲食物の過剰摂取や体を冷やす習慣があるとき(子宮の冷えを招く)
  • 過労や睡眠不足、大きな病気のあと(気血が消耗している)
  • 出産の繰り返しや加齢による腎精の減少(子宮への栄養供給が低下する)
  • 脂っこいもの・辛いもの・アルコール・甘いものの過剰摂取(体内に湿熱が生じやすい)
  • もともとの虚弱体質(体を温める力が生まれつき弱い)

このように、生理痛はその人の体質・生活習慣・環境と密接に関わっています。「毎月つらいのは仕方ない」と諦めてしまう前に、ご自身の体質タイプを知ることが大切です。

東洋医学でみる生理痛の7つのタイプ

東洋医学では、生理痛を引き起こす体質・原因のパターンを複数のタイプ(証)に分類します。以下に代表的な7つのタイプをご紹介します。症状の特徴を見ながら、ご自身に近いタイプを探してみてください。

① 気滞血瘀(きたいけつお)タイプ――ストレスと気血の滞りが生み出す痛み

体内の「気(エネルギー)」の流れが滞ることで、血液の運行も阻害され、子宮に血が停滞して痛みが生じるタイプです。全身の気血の巡りを調節する五臓の「肝(かん)」の機能失調が大きく関わっています。

目安症状

  • 月経前〜月経期にかけて、下腹部が張って痛む(押すと痛みが増す)
  • 経血量が少なく、ポタポタと滴り落ちるように出る
  • 経血の色は紫色がかっており、血の塊が混じる
  • 月経前に乳房や脇肋部(わきから肋骨にかけての部分)が張って痛む
  • イライラしやすく、情緒が不安定になる

◎治法

疏肝理気(そかんりき)・活血化瘀(かっけつかお)——肝の気の流れを整え、停滞した血をほぐして月経を順調にします。

◎代表的なツボ

  • 太衝(たいしょう):足の甲、親指と人差し指の骨の間。肝の気の滞りを解消する代表的なツボ。
  • 三陰交(さんいんこう):内くるぶしの上3寸(指4本分)。気血の巡りを整え、月経痛に広く応用される。
  • 血海(けっかい):膝のお皿の内側上端から指2本分上。血の停滞を改善する。
  • 膈兪(かくゆ):背中の胸椎7番の外側。「血」を活発に巡らせる働きがある。

◎養生のポイント

ストレスを溜め込まないよう、深呼吸・軽い散歩・好きな音楽を聴くなど、気分転換の習慣を意識的につくりましょう。生理前は特に感情が不安定になりやすい時期ですので、無理をせず、ゆったりとした時間を過ごすことが大切です。


② 寒湿阻滞(かんしつそたい)タイプ――冷えと湿気が子宮を凍りつかせる

寒冷・多湿な環境や飲食習慣が子宮に冷えを生じさせるタイプです。

冷えは血液を凝縮させ(まるで水が凍るように)、子宮での血液循環を妨げることで生理痛が生じます。

目安症状

  • 月経前〜月経中に下腹部が冷えて痛む(温めると楽になる)
  • 腰背部全体に痛みが広がる
  • 経血量が少なく、色は暗色で血の塊が混じる
  • 寒さを恐れる(とにかく寒がり)
  • 下痢をしやすい
  • 舌の苔が白く厚い

◎治法

温経散寒(おんけいさんかん)・除湿化瘀(じょしつかお)——経絡(気血の流れ道)を温め、冷えと湿気を取り除き、血の停滞を改善します。

◎代表的なツボ

  • 関元(かんげん):おへその下3寸(指4本分)。子宮を温め、冷えからくる生理痛に効果的。
  • 三陰交(さんいんこう):内くるぶしの上3寸。体を温め、冷えと湿を除く。
  • 帰来(きらい):おへその下4寸、正中線の外2寸。
  • 腎兪(じんゆ):腰椎2番の外側1.5寸。腰を温め、腎の機能を補助する。

◎養生のポイント

生理前・生理中は冷たい飲食物や生もの(刺身・サラダなど)を控え、温かいものを積極的にとりましょう。雨の日に長時間濡れたり、水泳など体が冷えやすい運動は生理周辺の時期を避けることをおすすめします。腹巻きや下半身を温めるインナーも効果的です。


③ 気血虚弱(きけつきょじゃく)タイプ――体のエネルギー・栄養が足りない

体内の「気(エネルギー)」と「血(栄養物質)」が不足することで、子宮に十分な栄養が届かなくなり痛みが生じる「不栄則痛」のタイプです。もともと虚弱体質の方や、長期間の病後に見られることが多いです。

目安症状

  • 月経中〜月経後に下腹部がじんわりとかすかに痛む(押すと楽になる)
  • 経血の色が薄く、サラサラとした液状
  • 顔色が青白い
  • 精神的な疲労感・倦怠感が強い
  • 動悸・息切れがある
  • 食欲がない・下痢をしやすい
  • 舌の色が薄く(淡い)、脈が細い

◎治法

益気養血(えっきようけつ)・調経止痛(ちょうけいしつう)——気と血を補い、月経を整えて痛みを和らげます。

◎代表的なツボ

  • 気海(きかい):おへその下1.5寸。気を補い、体力を高める。
  • 足三里(あしさんり):膝のお皿の下端から指4本分下、脛骨外側。脾胃(消化機能)を補い、気血の生成を助ける。
  • 三陰交(さんいんこう):内くるぶしの上3寸。血を補い、月経を整える。
  • 脾兪(ひゆ):背中の胸椎11番の外側。脾の機能を高め、気血を生み出す力を補う。

◎養生のポイント

消化の良い温かい食事を規則正しくとることが基本です。大麦・山芋・なつめ・黒ごまなど、気血を補う食材を取り入れましょう。

過労・夜更かしは気血の消耗を加速させますので、十分な睡眠と無理のない生活リズムを心がけてください。


④ 肝腎虚損(かんじんそんきょ)タイプ――肝と腎の疲弊が子宮を弱らせる

子宮へ気血を供給する主要な臓腑である「肝」と「腎(じん)」が損傷・消耗することで、子宮や気血の通り道が栄養不足に陥り生理痛が生じるタイプです。

腎は「精(せい:生命エネルギーの根本)」を蓄える臓腑で、加齢・出産・過剰な性生活などで消耗しやすいとされます。

目安症状

  • 月経中〜月経後に下腹部や腰部がじんわりと痛む
  • 時に耐え難い激痛になることもある
  • 経血の色は薄く、量が少ない
  • ・膝や腰がだるく、重だるい感じがある

◎治法

補益肝腎(ほえきかんじん)・調経止痛(ちょうけいしつう)——肝と腎を補い、子宮への気血の供給を回復させて痛みを和らげます。

◎代表的なツボ

  • 太谿(たいけい):内くるぶしとアキレス腱の間のくぼみ。腎の機能を補う代表的なツボ。
  • 肝兪(かんゆ):背中の胸椎9番の外側。肝の機能を補い、気血を整える。
  • 腎兪(じんゆ):腰椎2番の外側1.5寸。腎を補い、腰の痛みやだるさを改善する。
  • 三陰交(さんいんこう):内くるぶしの上3寸。肝・脾・腎の3経が交わるツボで、補益作用が高い。

◎養生のポイント

腎の精を消耗しすぎないよう、規則正しい生活と十分な睡眠が何より大切です

。黒豆・黒ごま・クルミ・山芋など「黒い食材」「粘り気のある食材」は腎を補うとされています。無理のない範囲でゆったりとした運動(ヨガ・太極拳など)も効果的です。


⑤ 湿熱鬱結(しつねつうっけつ)タイプ――体内の熱と湿気が血液の流れを阻む

消化器(脾胃)の機能低下により体内に余分な水分(湿)が生じ、その湿が熱を帯びることで生じるタイプです

。熱を帯びた湿の物質が子宮や血液の通り道に入り込み、血液の運行を妨げることで生理痛が起こります。

目安症状

  • 月経前〜月経期に、下腹部を刺すような痛みがある(熱感も伴う)
  • お腹を押されると苦しい・痛みが増す
  • 経血の色は黒みがかった赤で、においが強い
  • おりものが黄色く濁っている
  • 尿が赤っぽく、回数が多い

◎治法

清熱除湿(せいねつじょしつ)・化瘀止痛(かおしつう)——体内の熱と湿を取り除き、停滞した血をほぐして痛みを和らげます。

◎代表的なツボ

  • 陰陵泉(いんりょうせん):膝の内側、脛骨内側顆の下端のくぼみ。湿を除き、消化器の機能を整える。
  • 三陰交(さんいんこう):内くるぶしの上3寸。熱と湿を取り除き、月経を調整する。
  • 行間(こうかん):足の甲、親指と人差し指の間。肝の熱を冷ます。
  • 中極(ちゅうきょく):おへその下4寸。

◎養生のポイント

辛いもの・脂っこいもの・アルコール・甘いものを控えることが最優先です。

体内に湿熱が生じやすい食生活を改善しましょう。緑豆・はとむぎ・ゴーヤなど、熱を冷まし湿を取り除く食材を取り入れるのがおすすめです。また、長期間の精神的な抑圧も湿熱の一因となりますので、気持ちの発散も大切です。


⑥ 衝任虚寒(しょうにんきょかん)タイプ――体を温める力の根本的な不足

「衝脈(しょうみゃく)」と「任脈(にんみゃく)」は、女性の月経・生殖機能を主る重要な経脈(気血の通り道)です。このタイプでは、身体が本来持つ「温める力(陽気)」が不足していることにより、この2つの経脈が十分に温められず冷えが生じ、生理痛が起こります。

目安症状

  • 月経の後半〜終了後に下腹部が痛む(温めると楽になる)
  • 経血の色が薄く、量が少ない
  • 普段から寒がりで、下腹部が冷えやすい
  • 腰が冷えて重だるい
  • おりものが多く水様である

◎治法

温補衝任(おんぽしょうにん)・暖宮止痛(だんきゅうしつう)——衝脈・任脈を温め補い、子宮を温めることで痛みを改善します。

◎代表的なツボ

  • 関元(かんげん):おへその下3寸。衝任の起点となるツボで、子宮を温め陽気を補う。
  • 命門(めいもん):腰椎2番の棘突起下。体全体を温める「陽気の門」として重要なツボ。
  • 腎兪(じんゆ):腰椎2番の外側1.5寸。腎の陽気を補い、冷えを改善する。

◎養生のポイント

このタイプの方には、お灸(もぐさを使って温熱刺激を与える施術)が非常に効果的です。関元・命門などのツボへのお灸は、慢性的な冷えにじっくりとアプローチします。日常でも、湯船にしっかり浸かる、腹巻きをする、温かい飲み物を意識するなど、「温める習慣」を積み重ねることが大切です。


⑦ 肝火上炎(かんかじょうえん)タイプ――ストレスの熱が子宮の運行を乱す

全身の気血の巡りを調節する「肝」の機能が長期間にわたって失調すると、停滞したエネルギーが熱に変化します(これを「気鬱化火(きうつかか)」といいます)。その熱が子宮や血液の運行を過剰に刺激することで月経痛が生じます。①の気滞血瘀タイプが進行・悪化したものと考えることもできます。

目安症状

  • 月経前〜月経期に下腹部が張って熱っぽく痛む
  • 経血の色が鮮やかな紅色で量が多い
  • 顔や目が赤くなる
  • 怒りっぽく、感情の波が激しい
  • 頭痛・めまいがある

◎治法

清肝瀉火(せいかんしゃか)・行気活血(こうきかっけつ)——肝の熱を冷まし、気血の過剰な滞りを解消して月経を整えます。

◎代表的なツボ

  • 太衝(たいしょう):足の甲、親指と人差し指の骨の間。肝の熱を冷ます代表的なツボ。
  • 行間(こうかん):足の甲、親指と人差し指の間。肝経の火を直接瀉す(余分な熱を逃がす)。
  • 期門(きもん):乳頭の真下、第6肋間。肝の「募穴(ぼけつ)」で、肝気の鬱滞と熱を解消する。

◎養生のポイント

このタイプの方は、長期間のストレスや感情の抑圧が根本原因になっていることが多いです。感情を溜め込まず、信頼できる人に話す・書き出す・体を動かすなど、感情を外に出す習慣が助けになります。辛いもの・アルコール・カフェインなどは控えましょう。


【まとめ】まずは自分のタイプを知る。生理痛改善の第一歩

ここまで読んでいただきありがとうございました。

生理痛といっても、その原因や背景は一人ひとり異なります。

冷えが関係している方もいれば、ストレスによる気の巡りの悪さ、血の巡りの滞り、胃腸の弱さ、疲労や体力低下が影響している方もいます。

大切なのは、ただ「痛みを抑える」のではなく、まずはご自身がどのタイプに近いのかを知ることです。

そのうえで、体質や生活習慣に合わせて施術や養生を組み立てていくことが、東洋医学・鍼灸の大きな強みだと考えています。

特に生理痛は、1回の施術だけで完結するというよりも、鍼灸による体質へのアプローチに加えて、冷え対策・睡眠・食事・ストレスケアなど、日々の養生を組み合わせていくことが大切です。

横浜市神奈川区六角橋・白楽エリアの鍼灸マッサージ院 如月では、初回の問診をとても大切にしています。

痛みの出るタイミング、経血の状態、冷えやのぼせ、胃腸の調子、睡眠、ストレスの影響などを丁寧にお聞きしながら、舌の色や苔の状態、脈の力やリズムも確認し、お一人おひとりに合った証(しょう:東洋医学の診断パターン)を見極めて施術を組み立てています。

「毎月の生理痛がつらい」

「薬を飲んで何とか過ごしている」

「検査では異常がないけれど、体質から見直したい」

そんな方も、どうぞお気軽にご相談ください。

毎月のつらい生理痛が少しでも軽くなり、安心して日常を過ごせるように、誠心誠意サポートしてまいります。

【参考文献】

「中医基本用語辞典」 東洋学術出版

「漢方用語大辞典」 創医会学術部

「430種疾病鍼灸表解」 中医古籍出版社

「中医症状鑑別診断学」人民衛生出版社

「イラストわかる指圧 生理痛・生理不順」

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