「蛍光灯の明かりすら目に刺さるように感じる」——このような症状は、単なる「疲れ目」ではなく、羞明(しゅうめい)と呼ばれる状態かもしれません。
この記事では、西洋医学的な見解に続き、中医学(中国伝統医学)における「羞明怕熱(はねつ)」の分類や処方、鍼灸アプローチ、さらには日常の養生法について詳しく解説します。
羞明と眼精疲労の症状と原因:西洋医学の視点から
羞明(photophobia)は、光やまぶしさに対して過敏になり、不快感・痛み・涙・瞬きの増加などが現れる症状です。原因もさまざまであり、現代の医学でもなぜまぶしく感じるのかも分かっていないことも多いです。
痛みの有無で大きく分類されています。
・痛みのない場合
動眼神経麻痺・角膜や水晶体に濁りがある・黄斑変性など
・痛みのある場合
異物混入やコンタクトレンズ、ドライアイ、角膜感染症などで角膜が傷つく、緑内障、ぶどう膜炎など
痛みのある場合は、早めの病院受診が大切です。
羞明怕熱(はねつ)とは?中医学における分類と処方
中医学では、羞明は「羞明怕熱」として分類され、体質や病因別に3つの主要な病証に分かれています。
以下はそれぞれの特徴と処方例です。
風寒束表(ふうかんそくひょう)タイプ
- 主な症状:両眼の充血・眼痛・異物感、悪風(寒気)、鼻炎傾向
- 説明:風寒の邪気が体表・肺に侵入し、経絡の気血を滞らせて目に影響を与えた状態
- 処方:辛温解表・活血行瘀
- 対応するツボ:霊台・大椎・経渠など

気虚風熱(ききょふうねつ)タイプ
- 主な症状:充血、眼痛、異物感(やや炎症傾向)
- 説明:気の固摂作用の低下により、外邪(風熱)に侵されやすくなり、目に熱の影響を受けやすくなる(瞳孔が散大するイメージ)
- 処方:益気扶正・疏邪清熱
- 対応するツボ:足三里・大椎・関元など

気陰両虚(きいんりょうきょ)タイプ
- 主な症状:眼充血、眼痛、頭のふらつき、耳鳴り、口・喉の乾燥、便溏(ゆるい便)、冷え症
- 説明:長期的な過労や加齢などにより気と陰がともに不足し目に供給できない状態。エネルギー不足。
- 処方:益気温陽
- 対応するツボ:命門・合谷・大巨など

これらは中医診断をもとにした治療方針であり、実際の処方は鍼灸師や中医学の専門家による弁証論治(個別診断)に基づき調整されます。
中医学に基づく鍼灸治療の考え方と施術例
鍼灸治療院では、羞明や眼精疲労に対して単に目の周囲に鍼を打つのではなく、体質診断(証)に基づいて全身の経絡を整える鍼灸施術を行っています。
例えば:
- 【風寒束表】タイプには、風寒を散じるツボに鍼やお灸を用いる
- 【気虚風熱】タイプには、気を補い熱を清ますツボに鍼やお灸を用いる
- 【気陰両虚】タイプには、陰と気を補うツボに鍼やお灸を用いる
施術は「局所+全身調整」の2軸で構成され、目の症状にとどまらず、体調全体を底上げすることを目的としています。
羞明・眼精疲労に効果的な鍼灸ツボ(経穴)紹介
以下は、目の症状に特に効果のある代表的な経穴です。

①【上睛明(せいめい)】:目頭の少し上に位置。
②【太陽(たいよう)】:眉尻の外側。
③【攅竹(さんちく)】:眉毛の内側
④【承泣(しょうきゅう)】:目の下の骨の縁、瞳孔の真下。
これらは鍼やお灸で刺激を加えることで、経絡の流れを整え、症状の根本に働きかけます。
羞明・眼精疲労の改善を促す生活養生4か条
鍼灸の効果を最大限に引き出すためには、日々の生活習慣の見直しが不可欠です。
【1】目を酷使しない:1時間に1回は目を休める習慣を。
【2】早寝早起き:22時〜2時は肝(目に関連する五臓)の修復時間。十分な睡眠を確保しましょう。
【3】温灸・ホットアイマスクの活用:目元と足首を温めると効果的。
【4】遠くを見ること:近年「目で近くを見る時間」が増加傾向です。近くを見る=副交感神経優位の状態が続くため、遠くを見つめる時間を持ちましょう。
羞明と眼精疲労は体のサイン——鍼灸で根本から整える

羞明や眼精疲労は、目だけでなく「全身の乱れ」が現れているサインです。
特に中医学では、気血の不足や冷え、ストレス、過労など体質的な原因に注目し、鍼灸や食事・生活改善を組み合わせてアプローチします。
まぶしさや目の不調が気になる方は、ぜひ一度ご相談ください。
「見ることの快適さ」は、生活の質を左右します。鍼灸で、もう一度クリアな視界と健やかな毎日を取り戻しましょう。
横浜市神奈川区六角橋・白楽エリアにある「鍼灸マッサージ院 如月」では、あなたの体質・症状に合わせた丁寧な施術で、目の不調を根本からケアいたします。
「目薬では治らない」「原因不明の眩しさが続いている」――そんなお悩みのある方は、ぜひ一度気軽にご相談くださいませ。
【眼精疲労シリーズ 関連記事はコチラ】
▼シリーズ第1弾(目のかすみ)

▼シリーズ第2弾(目の充血)

※参考文献
・『漢方用語大辞典」 燎原書店
・『中医症状鑑別診断学』人民衛生出版
・『十四経発揮』 東医針法研究会編