ストレスや疲れがたまったある日、突然、全身にかゆみと赤みが広がった——
「薬を飲んだら一旦は落ち着いたけど、また出たらどうしよう…」
そんな不安を抱えた経験はありませんか?
蕁麻疹(じんましん)は、見た目の症状もつらいですが、再発するかもしれないという精神的なストレスも大きいものです。
当院にも、こうした蕁麻疹の悩みを抱えてご来院される方が年々増えています。
なかには、「40年ぶりに蕁麻疹が出た」というお声もありました。
心身ともに落ち着いた生活を送っていたはずなのに、なぜ突然、体が反応してしまったのか——。
西洋医学では、抗ヒスタミン薬などによる対症療法が中心ですが、
東洋医学(中医学)では“症状の奥にある体質的な原因”に目を向けます。
- 最近、どんな食事をしていたか
- 季節や気候の変化がどう影響していたか
- 感情の波や疲れがどう身体に現れていたか
そうした要因をていねいにひも解き、再発しにくい「本来のバランス」に戻していくのが東洋医学の考え方です。
この記事では、
- 東洋医学から見た蕁麻疹のしくみ
- 体質別に分類される6つのタイプ
- 実際の症例をもとにしたアプローチ方法
について、わかりやすくご紹介します。
蕁麻疹に悩む方が、少しでもご自身の体の声に耳を傾け、「私はこれで大丈夫」と思えるヒントになりますように。
蕁麻疹とは?突然現れる皮膚からのSOSサイン

蕁麻疹とは、皮膚に突然現れる赤みや膨疹、強いかゆみを特徴とする皮膚疾患で、多くは数時間以内に自然に消失します。
しかし再発を繰り返すこともあり、その原因や体質的背景は多岐にわたります。
特に東洋医学では「隠疹(いんしん)」という概念で蕁麻疹を捉えています。
東洋医学での蕁麻疹=「隠疹」とは?
中医学古典『430種鍼灸表解』によれば、蕁麻疹は「隠疹」に該当します。
「隠」の文字通り、現れては消えるという症状の出没が最大の特徴です。
皮膚表面に、赤色あるいは蒼白の平らな隆起が帯状または面状に出現し、痒みを伴います。
多くは突発的に発症し、短時間で消えるものの、根本原因が解消されない限り、繰り返し現れるケースが少なくありません。
蕁麻疹の原因:熱と栄養のアンバランス?

東洋医学(中医学)では、蕁麻疹の根本原因を探る際に、「熱(ねつ)」と「栄養(えいよう)」のバランスが大きな鍵を握っていると考えます。
● 熱(ねつ)とは?
東洋医学でいう「熱」は、体の中にこもった余分なエネルギーや、炎症、精神的なストレスなどを意味します。
イライラ、焦り、のぼせ、赤み、腫れなどが現れるとき、「熱がある」と表現されます。
● 栄養(えいよう)とは?
こちらは、皮膚や臓腑(内臓)が健康に保つために必要な生理物質「血(けつ)」のこと。
つまり、皮膚の健やかさに直結するという考えです。
この「熱」と「栄養」のバランスが崩れることで、体は外からの刺激に敏感になり、皮膚に蕁麻疹というかたちでサインを出すのです。
以下のような日常の要因が、バランスを乱すきっかけになります。
◎辛いもの・味の濃い食事の摂りすぎ
→ 体内に余分な熱がたまり、皮膚表面に炎症としてあらわれやすくなります。
◎暑さ・寒さなどの気候変化(外邪)の影響
特に体力や免疫力が落ちている時、外からの気候変動に体が敏感に反応し、熱や冷えを受けやすくなります。
◎胃腸の弱りや不調
消化・吸収力が落ちることで、肌を養うための“栄養(気血津液)”が十分に作られなくなります。
◎ストレスや怒りの感情の高ぶり
東洋医学では、感情も体のバランスに深く関わるとされています。怒りやストレスが過剰になると、熱(炎症)が生じ、皮膚症状として現れることがあります。
つまり、蕁麻疹は「体のバランスが崩れているよ」という、内側からの優しいアラームなのです。
6つの東洋医学的タイプ別・蕁麻疹の分類と特徴

東洋医学では、蕁麻疹は一律に扱うものではなく、体質・環境・生活習慣・感情の状態などを総合的に判断し、6つのタイプに分類します。
それぞれのタイプには特徴的な症状と体質傾向があり、対応すべき治療法・ツボも異なります。
風熱タイプ(熱気候による体表の熱)
風と熱が体表に侵入し、皮膚に熱毒がこもった状態。発疹は急に出て、広がりやすい。外気の熱に敏感で、疲れや免疫力が低下している方が発症しやすい
- 特徴:赤みが強く、痒みが激しい
- 対応策:清熱解表(熱と風を体表から追い出す)
- 対応する主なツボ:曲池(きょくち)・合谷(ごうこく)・風池(ふうち)など
風寒タイプ(冷えによる体表の収縮)
風と寒が皮膚を収縮させ、気血の巡りが悪化した状態。血行が滞ることで発疹が現れやすくなる。冷え性で皮膚が乾燥しやすい方に多い。
- 特徴:赤みが少なく、痒みは軽度または無い
- 対応策:温経散寒(温めて風寒を追い出す)
- 対応する主なツボ:風門(ふうもん)・外陵(がいりょう)・帰来(きらい)など
血熱タイプ(けつねつ:体内に熱がこもるタイプ)
血液中に熱がこもり、皮膚に炎症として現れる状態。熱の原因は怒り・ストレス・辛い物・アルコールなど。
- 発症傾向:突発的かつ急速に広がる
- 対応策:清熱涼血(血中の熱を冷ます)
- 対応する主なツボ:支正(しせい)・天府(てんふ)・孔最(こうさい)
血オタイプ(けつお:血の巡りの悪さ)
血が滞り、皮膚に老廃物がたまりやすい状態。新鮮な血液が届かないイメージ。
- 特徴:赤黒い発疹、夜間に悪化、掻くと広がる
- 対応策:活血化オ(血の滞りを改善)
- 対応する主なツボ:膈兪(かくゆ)・血海(けっかい)・三陰交(さんいんこう)など
胃腸積熱タイプ(いちょうせきねつ:消化器からくる熱)
胃腸に熱がこもり、その余分な熱が皮膚にまで影響して蕁麻疹を引き起こす状態。食べ過ぎ・油物・魚介・甲殻類などの摂取過多が原因。
- 特徴:腹部の不快感、便秘、赤みは少なめで痒みが主
- 対応策:清熱化湿(熱と湿気を取り除き、消化機能を整える)
- 対応する主なツボ:偏歴(へんれき)・陰陵泉(いんりょうせん)・胆兪(たんゆ)など
気血両虚タイプ(きけつりょうきょ:エネルギー不足型)
体を守る気と皮膚を養う血の両方が不足し、バリア機能が低下している状態。慢性化しやすく、再発も多い。慢性疲労、貧血、虚弱体質、ストレス過多が原因。
- 特徴:赤みは弱く、痒みが長引き、治癒が遅い
- 対応策:補気養血(気と血をしっかり補う)
- 対応する主なツボ:足三里(あしさんり)・三陰交(さんいんこう)など
蕁麻疹の治療において大切なポイント
- 一時的な症状の抑制だけでなく、再発のリスクを減らすこと
- 自身の体質や生活習慣に目を向けること
- 養生(生活養生、食養生)を取り入れた日常の見直し
- 体質に合った漢方薬・鍼灸施術を選ぶこと
特に「栄養不足型(気血両虚)」のようなタイプは改善に時間がかかる傾向があるため、長期的な視点での治療と予防が不可欠です。
東洋医学の力で、蕁麻疹に悩まない生活へ

蕁麻疹は、「皮膚のトラブル」として表面に現れる問題である一方、身体が「何か不調がある」と教えてくれているサインかもしれませんます。
「薬に頼りすぎず、体の力で改善したい」「体質改善も含めて根本的に治したい」とお考えの方には、東洋医学的なアプローチは非常に有効です。
東洋医学では、こうした症状を単なる表面的なものと捉えず、全身のバランスと生活習慣の乱れとして捉え、調整していくのが特徴です。
単に症状を抑えるだけでなく、根本的な原因にアプローチすることで、繰り返さない体を目指すことができます。
横浜市神奈川区六角橋・白楽エリアの鍼灸マッサージ院如月では、初診時に丁寧な問診と体質診断を行い、あなたに最適な治療方針を一緒に立てていきます。蕁麻疹でお悩みの方は、ぜひ一度ご相談ください。
※参考文献
・『漢方用語大辞典」 燎原書店
・『中医症状鑑別診断学』人民衛生出版
・『430種鍼灸表解』中医古籍出版社
・『十四経発揮』 東医針法研究会編
