朝、目覚めた瞬間に「首が痛くて動かせない!」と感じた経験はありませんか?
それがいわゆる「寝違え」です。
デスクワークやスマホの長時間利用が増えた現代では、寝違えを繰り返す人も少なくありません。
多くの人は「湿布を貼れば治る」「一晩寝れば楽になる」と考えがちですが、実際には痛みが長引いたり、首だけでなく肩や背中にまで広がるケースもあります。
この記事では、以下の内容の詳細をお伝えしたいと思います。
- 寝違えの原因と仕組み
- 東洋医学での分類と考え方
- 鍼灸による具体的なアプローチ
- 自宅でできるセルフケア
寝違えとは?西洋医学と東洋医学の違い

寝違えとは、睡眠中に首へ不自然な負荷がかかり、起床時に首や肩に激しい痛みを感じる状態を指します。
西洋医学では「首の捻挫」「筋肉や靭帯の損傷」と説明されることが多く、安静・湿布・鎮痛薬といった対処が一般的です。
一方、東洋医学では寝違えを「落枕(らくちん)」と呼びます。これは「枕から頭が落ちてしまう」という意味に由来し、首の可動域が制限され、強い痛みを伴う症状を指します。
東洋医学的には、単なる筋肉の損傷だけでなく、外部から侵入する「風邪(ふうじゃ)」や「湿気」「熱」といった要因も関与すると考えられています。
このように外的な環境「外邪」が身体の気血の巡りを妨げることで、首の動きが制限され痛みが出ると説明されるのです。
寝違えの4つのタイプ(東洋医学的分類)

東洋医学では寝違えを大きく4つに分類します。それぞれ特徴が異なるため、自己判断が難しいケースもあります。
風湿タイプ|湿気タイプ
冷えや湿気によって気血の流れが滞り、筋肉が固まるタイプです。梅雨時や湿度の高い日に悪化しやすい傾向があります。
◎その他見られる症状
- 首や肩の強張り
- 身体が重だるい
- 悪寒や発熱を伴うことがある
◎養生のポイント
- 湿気を避け、身体を冷やさないようにする
- 温かいお茶やスープを摂り、胃腸を守る
- 入浴で発汗を促し、湿を外に出す
風熱+痰タイプ|熱タイプ
炎症や感染に近いイメージで、急な腫れや強い熱感を伴うのが特徴です。
◎その他見られる症状
- 発熱があり、悪寒は軽くなる
- 首の両側が腫れて熱感がある
- 舌が赤く、苔は黄色
- 脈が速く緊張している
◎養生のポイント
- 十分な睡眠と水分補給で熱を鎮める
- 無理なストレッチやマッサージは避けて安静にする
捻挫タイプ
スポーツや急な動作、寝返りで関節や筋肉に過度な負荷がかかるタイプです。
◎その他見られる症状
- 首から肩、背中にかけて広がる痛み
- 動かすと強い痛み
- 深呼吸や咳でも響くことがある
◎養生のポイント
- 姿勢を整え、負担をかけないように生活する
- 発症直後は無理に動かさず、痛みが強い場合は冷却
- 数日後、炎症が落ち着いたら温めて血流を促す
寝違えタイプ
もっとも多いタイプで、多くの人が経験する寝違えです。
◎その他見られる症状
- 典型的な首の動作時痛
- 首を横に倒す、上を向く、下を向くなどで痛む
- 比較的軽症から中等度の痛み
◎養生のポイント
- 温めて筋肉を緩める(ホットタオル・入浴など)
- 長時間同じ姿勢を避ける
- 枕の高さや寝姿勢を見直す
鍼灸による寝違えの改善法
寝違えの痛みに対しては、以下のようなアプローチが取られます。
【代表的なツボ】
- 落枕(らくちん):手の甲の中指と人差し指の骨の間。寝違えに特化したツボ。
- 合谷(ごうこく):手の親指と人差し指の間。炎症や痛みの緩和に効果。
- 後渓(こうけい):小指の付け根近く。首や肩の可動域改善に有効。

【治療方法】
- 遠道刺:首そのものには鍼を打たず、手足のツボを使って間接的に改善する方法(炎症性が強い場合によく用います)
- 局所治療:炎症が強くない場合、関連する筋肉や関節に直接アプローチすることもあります。
【改善の目安】
多くの場合、2〜3回の施術で大きな改善が見られます。急性期であればあるほど、早く回復しやすいのが特徴です。
寝違えのセルフケア方法
鍼灸を受けるまでの間や、軽度の寝違えであれば、次のセルフケアも有効です。
- ツボ押し : 「落枕(らくちん)」を指で押す - 圧痛がある場所を軽く刺激する
- お灸 :市販の台座灸(千年灸など)を「落枕」や「後渓」に使用
- 温める or 冷やす : 炎症が強い(安静時も激痛、腫れがある)場合 → 冷やす ・ こわばりが中心で炎症が弱い場合 → 温める
- 姿勢改善 :枕の高さを見直す ・デスクワークでは背筋を伸ばす ・スマホ首を避けるため、画面を目の高さに調整するなど

よくある質問(FAQ)
寝違えは鍼灸で早めに改善!

寝違えは誰にでも起こる身近な症状ですが、放置すると再発や慢性化につながるリスクがあります。
鍼灸治療は気血の巡りを整え、自然治癒力を高めることで痛みをやわらげ、再発防止にもつながります。
もし「首が回らない」「日常生活に支障がある」と感じたら、セルフケアで一時的に和らげつつ、早めに専門の鍼灸院へ相談してみてください。
横浜市神奈川区六角橋・白楽エリアの「鍼灸マッサージ院 如月」では、東洋医学✖️睡眠科学の知見を用いたオーダーメイド施術をご提供しています。
寝違いでお悩みの方はぜひご相談ください。
【参考文献】
- 『中医症状鑑別診断学』 人民衛生出版社
- 『中医証候鑑別診断学』 人民衛生出版社
- 『中医基本用語辞典』 東洋学術出版
- 『十四経発揮』 東医針法研究会編