睡眠は私たちの健康にとって欠かせないものですが、「なぜ眠くなるのか?」という仕組みを理解している方は多くありません。今回は、《眠気のメカニズムとその仕組み》を活かした睡眠の質を向上させるための工夫について解説します。
眠気が生じる仕組み:「ツープロセスモデル」
睡眠は、「睡眠圧」と「体内時計」という二つのプロセスが組み合わさることで調整されています。これは「ツープロセスモデル」と呼ばれています。

1. 睡眠圧(疲労の蓄積による眠気)
睡眠圧とは、起きている時間が長くなるほど増加し、最終的に眠気を引き起こす圧力のことです。
これは脳内に蓄積される「アデノシン」という物質が関与しています。
アデノシンは、日中の活動によって脳に蓄積され、一定のレベルを超えると眠気が強くなります。
例えば、マラソン大会の後に強い眠気を感じるのは、アデノシンが急激に増加するためです。
一方で、覚醒を促す物質として「ドパミン」があります。ドパミンが分泌されると、眠気を抑制し、集中力や意欲を向上させます。
例えば、昼食後に眠くなったとしても、好きなスポーツを始めると目が覚めるのは、ドパミンの働きによるものです。
また、コーヒーや紅茶に含まれるカフェインは、アデノシンの働きを抑制する作用があるため、一時的に眠気を和らげます。しかし、夕方以降の摂取は睡眠の質を低下させる可能性があるため注意が必要です。
2. 体内時計(サーカディアンリズムによる調整)
体内時計は、約24時間周期で体のリズムを調整するメカニズムであり、「視交叉上核(しこうさじょうかく)」という脳の部位によって制御されています。この視交叉上核は、光の刺激によってリズムを調整し、覚醒と睡眠のタイミングを決定します。
体内時計が正常に働くためには、適切なタイミングで「メラトニン」という睡眠ホルモンが分泌されることが重要です。
メラトニンは通常、起床後14〜16時間後に分泌が始まり、眠気を誘発します。
しかし、夜に強い光を浴びると、メラトニンの分泌が抑制され、体が「朝」と錯覚し、寝つきが悪くなることがあります。これが現代社会における睡眠トラブルの大きな要因の一つです。
快眠のためにできる工夫
眠気のメカニズムを踏まえ、日常生活で実践できる睡眠の質を向上させる工夫を紹介します。

1. 朝の光をしっかり浴びる
体内時計をリセットするために、起床後できるだけ早く自然光を浴びることが重要です。朝の光を浴びることでメラトニンの分泌が抑制され、夜に向けて適切な時間に再分泌されるようになります。
2. 寝る前の強い光を避ける
夜に強い光を浴びるとメラトニンの分泌が抑制され、寝つきが悪くなります。
現在スマートフォンやパソコンのブルーライトは影響は考慮しなくても良いと言われておりますが、
暗闇の中での使用などブルーライトを強化をしないようにしましょう。
就寝1〜2時間前には使用を控えることが望ましいでしょう。
3. 日中の活動量を増やす
適度な運動をすることで睡眠圧がしっかり蓄積され、夜に自然と眠くなります。
特にウォーキングや軽いストレッチは、睡眠の質を向上させる効果が期待できます。
4. カフェインの摂取はディナータイムまでに
カフェインはアデノシンの働きを抑制し、覚醒を促す作用があります。
そのため、ディナータイム以降の摂取は睡眠の質を低下させる可能性があるため注意が必要です。
(血中半減期はおよそ4時間程度と言われております。)
まとめ
眠気は「睡眠圧(疲れたから寝る)」と「体内時計(夜だから寝る)」の二つの要素によって調整されています。
- 睡眠圧 は睡眠物質・疲労物資の蓄積によって高まり、眠気を引き起こす。
- 体内時計 は視交叉上核によって制御され、光の影響を受ける。
睡眠の質を向上させるためには、朝の光を浴びること、寝る前の強い光を避けること、日中の活動量を増やすこと、カフェインの摂取を控えることが有効です。
日々の生活に取り入れやすい工夫を実践し、質の高い睡眠を目指しましょう。
睡眠の質に不安がある方・眠りについて不安のある方は、ぜひ「鍼灸マッサージ院 如月」へご相談ください。
東洋医学の伝統的な知見と睡眠科学の観点から、あなたに合った最適なケアをご提案いたします。
最後までお読みいただきありがとうございました。
※参考文献
·「ビジネスに活かす睡眠資格 スリーププランナー」西野精治(著), 千葉伸太郎(著), 一般社団法人ブレインヘルスラボ